【連載もの】ぼんやり京都(5)
先日、ある「経営者の集い」みたいな会合に参加して来た。
お店や会社を経営している人が数人集まり、意見交換や各業種の現状などを報告するような、どちらかというと固めの内容。
その会は、参加者の1人でもある方の、自宅で開催されたのだが、なぜか部屋の中にふくろうが放し飼いにされていた。近くで見ると、ちょっとひるんでしまうような巨大サイズ。棚の上が定位置らしく、置物のようにじっとして、こちらの様子を伺っている。さすが猛禽類、スキがない。粗相をすればバサバサと襲いかかられ、目玉をくり抜かれるかもしれない。
そんな、ふくろうフクちゃんの熱視線を浴びながら、なごやかに会は進行する、出てくるお話は、どれもおもしろく、興味深い。経営のプロとはこういうものか。と心底感心する。「さて、松本さん」と話を振られたものの、ダントツにスケール感の小さいビジネス、いや、もはやそれはビジネスでもなんでもないだろう、というような話題しか出てこない。展望も裏付けもないオッサンの与太話だ。
ふと、棚の上をみると、フクちゃんもきょとんとしている。
完全にやらかした。と思ったのだが、意外にもウケが良く、ひと安心。
他の参加者の方々の辛辣な意見も参考になり、幸いフクちゃんの逆鱗に触れることもなく、出てよかったと思える集まりだった。
先日、そんな与太話が新聞に載る機会があった。
ナガオカケンメイ(D&DEPARTMENT)さんにお会いしたときに、つい口をすべらしてしまった、ホホホ座独自のフランチャイズ・システムが、毎日新聞の『ナガオカケンメイのニッポンを元気にする工夫』に掲載されたのだ。
全国300万の読者に恥をさらすことになるのか。と、うろたえたが、ケンメイさんは、こちらのとりとめもない話しを上手くまとめてくれ、なんだかとても良いことをしているように書いてくれた。
ありがとうございます。
そもそも、フランチャイズというものが何なのか。全然わかっていないので、その名が正しいのかどうかもわからないのだが、ホホホ座では、<ホホホ座>という屋号を使ってお店をやって頂く、「店名貸し」のようなことをやっている。貸すのではなく、「名を共有する」と表現した方が適切かもしれない。
フランチャイズ料みたいなものも、もちろんいらない。お店は、八百屋でも、コインランドリーでも何でもいい、もっと言えば店である必要すらない、バンドとか漫才コンビでもいい。
このシステムはホホホ座尾道店コウガメを立ち上げるときに、一緒に作り上げたものだ。
尾道店は、本や雑貨などの商品構成は浄土寺店と似ており、関係性も深いので「支店」感が強いが、メインの商品は焼き菓子だ。スタイルは似ているようで、全然違う。もちろんお店も独立採算でやっている。
経営者の集いのみなさま、ケンメイさんを「?」とさせてしまったのはその点だった。確かに何の得があるのか。パッと聞いただけではわからない。
しかし、今のところ良いことばかりなのだ。
お互い、知らなかった商品を紹介し合えるし、行き来も出来る。一緒にイベントもやりやすい。全国各地に拠点も作れるし、名前も広まる。尾道店の焼き菓子は浄土寺店でもかなりの人気商品だ。
異業種であればあるほど、いろんな可能性が見えてくる気がする。
さて、そうはいうものの、これからどうなるかはわからない。お店の名前って、そんな簡単に決めて良いものでもないだろう。経験上、長くお店をやっていると、屋号などどうでも良くなってくるのだが、意味や思い入れを込めたくなるのは当然だ。
ちなみに「ホホホ座」という名前に意味は無く、「ホホホ」という部分がタテでもヨコでも一本の線でつなげることができ、シンメトリーに表記出来る。という理由のみで採用された。
ひとつ欠点を言うと、「ほほほざ」という発音が思ったより言いにくいので、これからホホホ座の屋号を使用したい方は、その点、注意をお願いします。
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松本伸哉